投稿者：望亜（ノア） ｜ カテゴリ：ライフスタイル / シネマ
この記事の画像は右記サイトより転載しております。https://happinet-phantom.com/pastlives
過去は消えない。ただ、静かに波のように形を変えて、今の自分に触れてくる。
何気なく、U-NEXTで鑑賞した『Past Lives／再会』。
静かな映画だった。
観終わったあと、胸の奥にじんわりと波紋が残る。
ノラとヘソン。
二人の間に流れていたのは、
沈黙よりも深い“時間”だった。
あれを「恋」と呼ぶのは、きっと浅い。
深淵で、名前のない感情――
人生でふと映してくれる、やわらかな残像のようなものだ。
観ているうちに、自分の中にも
いくつもの「もし」が浮かんできた。
あのとき声をかけていたら――
あの人に言葉を返していたら――
そうして生まれなかった人生の断片たちが、
静かに胸の底でざわめいていた。
映画の中で語られた「イニョン（縁）」という言葉。
何千もの過去のつながりが、いまを作っているという。
偶然の出会いも、擦れ違いも、
きっとどこかの時間で手を取り合っていた証なんだろう。
そう思うと、この世界が少しだけ優しく見えた。
ラストでノラが流した涙。
あれは後悔じゃない。
“過去を受け入れる強さ”の涙だと思う。
人は誰も、選ばなかった人生を抱えながら、
いま目の前の波を越えていく。
それでいいのだと思った。
スクリーンが暗くなり、部屋の灯りを戻すと、
窓の外には静かな夜風が吹いていた。
過去も未来も、たぶん同じ海の上にある。
僕らはその波間で、
何度でも“いま”を選び直して生きていく。
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